苦悩チャンネル

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コトバの間

コトバの間とは、言葉で表現されない空気感や、対象物に付随する感情的で曖昧な要素を指す表現である。例えば、自分が大切にしている場所に行った時、その場所で感じる風景や音、匂いなどの要素は、単独で見ればその場所とは全く関係のないもののように思えるが、その場所と自分の感情がクロスすることによって、新たな意味合いが生まれ、コトバの間が生じる。

ある日私は、自分が育った地元に帰ってきた。故郷といえば故郷だが、私にとっては、喧騒の都会に生きる上で忘れがちになりがちな自然な風景や、地元のお婆ちゃん方が大勢住む町並み、夕方に鳴り響く神社の鐘など、まるで別世界のような光景が広がっていた。そんな中で私は、自分が抱えていた都会で生きる上での不安やプレッシャーを、この地でのリフレッシュとともに解消しようと意気込んでいた。

その日、私は偶然にも友人に会うことができた。彼女は、私が大好きな小説家の本のリストを教えてくれた。私はその本を読むことで、この地の風景や空気感、そしてこの地にたどり着くまでの自分の道程を、それぞれの言葉とともに味わうことができた。本とともに歩く街並みは、いつ見ても独特な静けさで包まれていた。

ある晩、私はその小説家について考えていた。彼は、とても深く複雑な文体を持つ作品を書いている。一見大変難しいように見えるが、彼が描く世界観は、どこか懐かしい感じがあるのだ。彼が描く風景やキャラクターには、私の故郷の光景と重なる部分が多く、その重ね合わせが、私たちが生きる世界にゆったりとしたリズムを与えてくれるのである。

コトバの間は、文字で表現されることのないものを、言葉を通じて伝えることができる素晴らしい表現のひとつである。空気や音、光景などが作り出す、感情的なモノの見方を重視するように、言葉の間にもゆったりとしたコトバの間が生まれると、生活にとても豊かなものが加わるのである。